大会目的

目的

アジアで生まれ世界で広く親しまれているゲームの一つとして囲碁がある。 碁盤と碁石があれば、言葉は通じなくとも、世界中の囲碁プレーヤーと対局す ることができる。まさに、囲碁は世界の公用語である。


ゲームを題材にした研究としては、チェスを題材としたものが有名である。 「強いチェスのプログラムを作る」という目標のもと、様々な人工知能研究が行 われてきた。コンピュータチェスの研究は、コンピュータの黎明期から始められ、 1997年にコンピュータプログラムDeepBlueが当時の世界チャンピオン・カスパ ロフ氏を破るまで、情報技術の先駆的役割を果たしてきた。日本ではチェスの 研究を引き継ぐ形でコンピュータ将棋の研究も進められ、今やトッププロ棋士に 近づく実力をつけてきている。


一方で、コンピュータに囲碁を打たせるという研究も、1960年代頃から始め られてきた。しかし、他のゲームに比べ広大な盤面を有するゲームであること、 局面評価が難しいことなどから、チェスで用いられてきた従来の探索による手法 が殆ど使えないため、なかなか強いプログラムが作られなかった。 ところが、近年現れたモンテカルロ法にUCTを組み合わせた全く新しい手法 が現れて事態を一変させた。この手法によるコンピュータ囲碁の進歩は目覚し く、アマチュア初段のレベルに一気に迫った。このブレークスルーをきっかけに、 コンピュータ囲碁の研究は、現在非常に注目を集めている。


このような流れから、コンピュータ囲碁を強くするという目標のもと、様々 な新しい情報処理技術が開発される期待があり、これから先導的な研究になる 可能性を秘めている。実際、コンピュータ囲碁のプログラムを作るためには、 人工知能的な技術のみならず、認知科学、探索、パターン認識、データマイ ニング、高速化プログラミングなど、様々な技術を駆使する必要がある。


本分野の活性化のためにも、コンピュータ囲碁大会を開催することは、非常 に有意義なことである。これまでにも、コンピュータ囲碁の国際大会は、数多く 行われてきたが、資金面などの問題から、なかなか長続きする大会はなく、 現在のところ国内外で開催されている大規模な国際的コンピュータ囲碁大会 はない。毎年開発される新しい技術の進歩を測るベンチマークとして、大会を 開催して、棋力の進歩を記録として残していくことは、学術的にも重要な意味 を持つだろう。


本大会は、電気通信大学の「エンターテイメントと認知科学研究ステーショ ン」が主催となり、「コンピュータ囲碁フォーラム」の協力を得ることにより、 2007年より開催されている。大学主体の大会であるので、学術的、教育的 側面を持った大会にしていきたいと考えている。 また、近年ネットによる大会が増えてきているが、本大会では、開発者が一 同に会すことで、お互いのプログラムについて技術的な交流をする場も提供 していきたいと考えている。本大会を通じて多くのコンピュータ囲碁開発者の 国際交流ができるような様々な企画も実現していきたいと考えている。


2008年6月5日


大会運営委員会 委員長 伊藤 毅志(電気通信大学)