大会目的

ゲームを題材にした研究の中で、コンピュータ囲碁の開発は特に難しいとされてきました。広大な盤面による合法手の多さと、説明の難しい石の強弱や死活などの複雑な局面評価は、様々なプログラム開発の試みを拒絶し続けてきました。それゆえ、最後の砦とも呼ばれてきました。

しかし、約10年前に出現したモンテカルロ木探索と、近年現れたディープラーニングの二つの技術は、この分野を一気に高みへと導きました。

2012年6月22日には、公益財団法人日本棋院と電気通信大学の間で、コン ピュータ囲碁の発展を通して情報通信技術などの学術分野、及び囲碁界 の発展に寄与することを目的とした覚書が交わされ、本大会だけでなく、プロ棋士とコンピュータ囲碁との置碁定期戦「電聖戦」を開催してきました。アルファ碁の出現により、コンピュータ囲碁は、置碁から互先というレベルになり、一つの目標を達成した感があります。

本大会は、電気通信大学の「エンターテイメントと認知科学研究ステーション」 が主催となり、「コンピュータ囲碁フォーラム」の協力を得ることにより、2007年より開催されてきました。本大会は、単に強さのみを競うものではなく、学術的、技術的交流のある大会にしていきたいと考え、近年ネットによる大会も増えている中、敢えて開発者が一同に会して、互いのプログラムについて技術的に交流できる場として機能してきました。

コンピュータ囲碁を強くするという目標は、一つのベンチマークであるトッププロ棋士に肉薄したことから、研究としての囲碁は、”強くする”という目標から”対戦して楽しい”、”対戦してためになる”という方向性にシフトしてきます。大学という場でコンペティションを続けていくのも一つの区切りの時期を迎えています。

今回は、記念すべき第10回大会ですが、ちょうどキリよく、これを持って、UEC杯コンピュータ囲碁大会を終了したいと思います。また、UEC杯上位プログラムがプロ棋士に挑戦する電聖戦も次回第5回を以ってファイナルとさせていただきます。コンピュータ囲碁の集大成の大会として、どのような対戦を見せるのか期待したいと思います。

当研究ステーションとしては、この分野の発展に寄与できることは、今後とも形を変えて行っていく所存です。これまで長きに渡って、本大会を愛し出場してくださった皆様方、ご支援賜った協賛企業、協力団体、多くの皆様方には、この場を借りて深く御礼申し上げます。

2016年10月28日

大会実行委員会 委員長 伊藤 毅志(電気通信大学)